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8月17日[その日の暦]

 
   エゾハタザオ (アブラナ科) Arabis pendula

友人のNさんはヤマハタザオ属Arabisの専門家だ。たいていのヨーロッパの言語を理解し,日本の植物の学名についてはトップクラスの知識を持っていると聞いていた。
初めて会ったのは新潟空港。丸刈り,あごひげ,丸い眼鏡。その時はカーボーイハットをかぶって真紅のスーツケースを転がしていた。ルックスは植物学者というより前衛芸術家だ。
新潟空港に集まったのは,S教授の調査に同行するためだった。それから3週間,沿海州の植物採集行で文字どおり同じ釜のメシを食って過ごした。もっとも,実際には,メシではなくポテトやカーシャと呼ばれる蕎麦の実であることも多かった。
植物も楽しんだが,私もNさんもロシア初体験だったので,なにもかもがおもしろくてしょうがなかった。田舎町で食料を仕入れるためにバスが止まると,私とNさんは一目散にキオスクや露天商を見に走った。ロシア側の責任者は,はらはらしていたらしく,そのたびに学生がお目付け役としてついて来た。
初日の採集で,NさんはArabis属の植物を採集した。全草にビロード状の毛が生える,エゾハタザオにしては少し変わった個体だった。私は,日本でもエゾハタザオをまだ見たことがなかった。長角果が開出して垂れ下る様子は,今まで知っているヤマハタザオの仲間とは一見してちがうことだけはわかった。
Nさんはていねいに掘り取って新聞紙にはさんだ。丸い眼鏡の奥の瞳が一瞬輝いたのが印象的だった。


【ひとくちメモ】
この個体はまだ咲き始めで長角果が発達していないが,果実期には長角果が左右に開出シ垂れ下る。
2001年8月16日 北海道足寄郡
ペンタックスZ-1P タムロンSP90mmF2.8 f4.5 絞り優先オート(-0.3) フジクローム・プロビア100

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