フォトエッセイ(野の花365日のオキナワスミレより) |
沖縄本島は大陸と長い間隔てられていたので,島固有の植物が多い。オキナワスミレもそのひとつである。 海岸の石灰岩の岩上に生えるが,石灰岩とはいっても,本州のものとはずいぶん見た目が違う。本州の石灰岩は表面がつるつるしているが,沖縄の石灰岩は珊瑚礁起源のものなので,表面が著しくでこぼこしている。薄い底の靴でその上を歩こうものなら,痛くて歩けないほどだ。 そのくぼみは,スミレが根をおろすにはかっこうの苗床になる。オキナワスミレの種子ははじけ飛ばずに,ぼろぼろと近くに種をこぼすだけだということが知られているが,こういった環境に生えるスミレにとっては,むやみに空中に種子を飛ばすより,確実に根元の岩のくぼみに撒いておく方が,有効な戦略なのかもしれない。
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【ひとくちメモ】 どういうわけか,このスミレに関してはヨーロッパやアメリカのスミレ仲間から問い合わせが多い。アメリカでは新しく見つかった種に関係があるのではないかと考えている人がいる。ヨーロッパでは,紀元前から栽培されているがその起源がよくわかっていない栽培種,パルマバイオレットに関係があるのではないかと考えている人がいる。 いずれも,写真を見ての印象で,明確な根拠はないようだが,世界のスミレマニアたちも,このスミレが日本のスミレのなかでも少し変わっていて,素性がはっきりしないことを,写真から嗅ぎとっているのかも知れない。
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【見わけ方】 同じく沖縄本当固有のスミレにシマジリスミレがある。やはり琉球石灰岩上に生え,見た目はそっくりだが柱頭の形などがちがう。 オキナワスミレはウラジロスミレの仲間といわれていたが,最近ではむしろアオイスミレなどに近縁ではないかという説も出されている。
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