フォトエッセイ(野の花365日のアキタブキより) |
フキは,南西諸島などごく一部の地方をのぞけば決して稀な植物ではないが,関東以西ではふきのとうを見つけるとちょっとうれしい気分になる。 「関東以西」と限定したのは,北日本では「見つける」などという言葉を使うまでもなく,いたるところにいくらでも生えているからである。 それにもかかわらず,雪が融けるのを待ちかねたように萌黄色の坊主頭をもたげる様子を見ると,待望の季節の到来に心が浮き立つのをこらえきれない。 東北北部以北では変種のアキタブキになり,大型で葉の展開が早い。大きなものでは葉柄の長さが人の背丈近くにまでなることもある。 以前,夕張山地のある谷で巨大なフキの森を歩いたことがあるが,まるでコビトになったような不思議な気持ちになった。 写真の場所も,夏になると見ちがえるようなフキの森になるにちがいない。
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【ひとくちメモ】 フキ,アキタブキとも,ふきのとうには雄性のものと雌性のものがある。遠くから見ると雄株は黄色っぽく,雌株は緑色っぽいのでそれだけでもだいたい判断できる。 1本のふきのとうはひとつの花ではなく,たくさんの頭花の集まりである。雄株ではこの頭花の先端が広がって横から見るとさかずき状だが,雌株では先端の幅が狭く横から見ると楕円形に見える。 キク科の植物はどれもそうだが,頭花はさらに小花の集合体で,本当の花は一本一本がほとんど糸くずにしか見えないような微細なものである。
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【見わけ方】 東北南部以南に生える基準変種のフキは小型で葉の展開が遅く,ふきのとうより葉の方があとから出てくるが,本変種はふきのとうと同時に葉が展開する。
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