フォトエッセイ(野の花365日のイズモコバイモより) |
写真が紹介されることの少ない種である。分布域が狭く,その上個体数も限られている。 これも,しばらく前まではホソバナコバイモと一緒にされていた種だが,生品で花の形を見ればその違いは一目瞭然である。 こんな顕著な種が,まだほんの20数年前まで認識されずにいたというのも驚くべきだが,地上に姿を現わしている期間が短く,しかも,人目に触れにくい早春の頃花を終えてしまうこの類ならではのことかもしれない。この時はどうしても日程がとれず,早朝豊橋を出て,のぞみと特急を乗り継いで,島根県の自生地まで日帰りを強行した。機会があればもう一度ゆっくり撮ってみたい植物である。
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【ひとくちメモ】 この植物の正体を確かめるために,ほかのコバイモ類と並べて栽培していたのは丸山巌氏であるが,氏が出張中,奥様の絢子さんが開花したものを見て,イズモコバイモの特異性を指摘したという逸話が残されている。種小名のayakoanaはその丸山絢子さんにちなむ命名である。
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【見わけ方】 花被片の肩が尖らない椀形の花が特徴。中国地方には,ほかに細い釣鐘形のホソバナコバイモしかないが,関東甲信越地方に生えるカイコバイモはよく似ている。花柱に突起があり,柱頭は分裂しないなどの点で異なる。
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