9-4 コブシ Magnolia kobus

  入学した高校の古い校庭には、校舎に並んで何本ものコブシの古木が立っていた。3学期の終業式の頃はまだ堅いつぼみだが、新学期が始まる頃になると、もう青々と葉を展開している。春休みのわずかな間に、花を咲かせ跡形もなく散ってしまったのだ。
 結局、在学中に花を見ることなく、この校舎は壊されコブシは切り倒された。その時の担任だった先生は、実生をひとつ持ち帰って庭に植えてあるそうだ。「宇宙とワンネスになる」インドの詩人タゴールのそんな言葉を教えてくださったのもその先生である。

※この写真については,専門家からタムシバである可能性が高いという指摘をいただいた。樹形が円錐形になり,山の稜線に生えるものはたいていタムシバだそうだ。タイトルはエッセイとの整合性をとるためにそのままにしておくが,そのあたりを考慮してご覧いただきたい。


1995年4月28日 長野県丸子町 ペンタックスZ-1P タムロンSP180ミリF2.5 f11 オート(-1/3) プロビア100