30年くらい前、梅雨末期に北岳に登った。2、3日まっていれば、梅雨明けの劇的な晴天を山上で迎えることができるのではないかと期待してのことだ。
肩の小屋に投宿して天候がよくなるのを待った。仲良くなったのは、山から富士を狙う初老の二人組。ねらいはキタダケソウと富士の一点だけだという。レンズは一本、フィルムは最小限、三脚もローアングル用の小さなもの。
その割には荷物が多いと思ったら、次から次へと、酒とともに自作だというつまみの酢漬けのタッパなどがでてくる。
そして、ここまで自分の足で担ぎあげたというのに、惜しげもなく、見知らぬ若者(当時)に振舞ってくれる。
3日3晚、風雨と酒盛りは続いた。
4日目の朝、いよいよ自分はあきらめて下山を決意したが、彼らはまだその大きなザックの中身を飲みきっていないようだった。
霧ヶ峰あたりまで高度をさげれば、悪天候とはいっても、霧のなかに見え隠れするカラマツソウのつぼみなどがいい被写体になってくれた。この分では、北岳は相変わらず風雨だろうと、山麓から彼らの境遇を気の毒に思った。
しかし、その後、4日めの肩の小屋で、彼らに会ったという人と偶然出会った。それが誰だったか忘れてしまったが、豊橋から来たと名乗ったら、昨日まで豊橋の若造がいたというような話しになったと聞いた。
その人によると、4日めの私の下山後、北岳は一時青空が広がったらしい。
二人組にはそれ以来会っていないが、無事に、ねらったカットを撮ることができたに違いない。
4日間、小屋に缶詰になっても耐えられる兵糧こそが、彼らの撮影を成功に導く、代え難い「装備」だったに違いない。
写真は後年三つ峠から撮影したもの。
そういえば、彼らのホームは、三つ峠だと言っていた。
「3日3晚、風雨と酒盛りは続いた。
4日目の朝、いよいよ自分はあきらめて下山を決意したが、彼らはまだその大きなザックの中身を飲みきっていないようだった。」
・・・と言う部分がいいですね。さりげないユーモアのセンスが、なんともいいな・・・と。富士の写真、広々と広がって、気持ちが解放される感じでステキです。風景写真も撮るのですね。以前読んだ、太宰治の「富岳百景」に魅せられて、Twitterに紹介される色々な富士の写真を楽しんでいますが、ここに紹介された富士もまた、本当に胸がすくようなステキな写真だと思います。
お天気待ちも苦にならない、お酒とつまみは撮影の『装備』。
豊橋の若者はその学びを、いまだにマジメに守っているのであります……か?(^∇^)
月も写ってますね(*´∀`)ウットリ♪
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もし三つ峠集合でも参加します!!