フォトエッセイ(野の花365日のダンコウバイより) |
信州の山里で目がさめた。 この日も高気圧に覆われて放射冷却が起き,咲き始めたオオイヌノフグリやオランダミミナグサの上にうっすらと霜が降りた。 早朝ひとわたりそれらを撮影して,谷あいの山道を走り出したら,逆光の闇の中に点々と黄色の花が浮かびあがった。 ダンコウバイである。 早春に黄色の花を咲かせるクスノキ科の樹木は種類が多いが,ダンコウバイはその中でもひときわ黄色のかたまりが鮮やかで大きい。 スミレや桜の咲く春たけなわの頃にはまだちょっと早いが,コンサートの始まる前,オーケストラのチューニングが聞こえてくるような予感に満ちた季節である。
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【ひとくちメモ】 ダンコウバイの葉は先が浅く3裂する特徴のある形。新緑の頃や紅葉の頃もこの形を覚えておくと,目につきやすい。
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【見わけ方】 アブラチャンはダンコウバイとよく似ているが,花序の柄が明瞭にある点がもっともわかりやすい識別点。ダンコウバイは柄がほとんどない。 遠くから見ると,アブラチャンの方が花序の黄色の色がやや淡く,ダンコウバイの方が鮮やか。花序の大きさもダンコウバイの方が大きいことが多い。
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