フォトエッセイ(野の花365日のフクジュソウより) |
正月の鉢植えとしてあまりに馴染み深い花である。しかし,自生地を見たことのある人は意外に少ないのではないだろうか。運良く自生地を見つけたとしても,もう花がすがれて茎を四方に伸ばしていることは多い。 野生のものが正月に咲いていることはないにしても,花期はすこぶる早く,開花してから雪が降ることもめずらしくない。 いつか,有名な自生地に撮影に行ってみたら,カメラを持った人が一生懸命フクジュソウの株のまわりに雪を運んでいた。 「この花は雪が写ってないと売れないんでねえ...」 いいタイミングをつかまえれば,そんなことをしなくてもフクジュソウのまわりに雪は積もっている。自然をこちらにたぐりよせるような撮影よりも,自分から自然に出会いに行く撮影の方が面白みがあると思うのだが...。こんな考え方はアマチュア臭いのかもしれない。
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【ひとくちメモ】 フクジュソウの花弁は黄色で輝くような光沢がある。これは太陽の光を集めるのに効率がよく,ちょうどパラボラアンテナのような役割をして花の中を暖めている。 フクジュソウ自身の大切な繁殖器官を守り生長を促進する役割もあるが,まだ気温の低い季節に昆虫に暖かい暖房つきの部屋を提供する役割があるようだ。 フクジュソウは蜜を出さない代わりに,このようにして花粉を運ぶ虫を呼び寄せている。
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【見わけ方】 フクジュソウは,以前は日本に1種と言われていたが,最近国内のものを4種にわける研究が発表されている。北海道東部にキタミフクジュソウ,北海道と本州にフクジュソウ,本州と九州にミチノクフクジュソウ,四国と九州にシコクフクジュソウがある。萼片の数と長さ,茎のつく花の数,茎が中空か中実かなどが見わけのポイントになる。詳しくはフクジュソウの仲間(会員のみ)を参照。
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