フォトエッセイ(野の花365日のジロボウエンゴサクより) |
今にもぷつんと切れそうな細い花柄に花をゆらゆらとぶらさげているので,他人事ながら,いつ切れてしまうかと心配になる。エンゴサクの仲間はどれもそうではあるが,ことにこのジロボウエンゴサクは繊細で心もとない。 スミレを太郎坊,ジロボウエンゴサクを次郎坊と呼ぶのが,草相撲の四股名だ。いずれも,花が花柄に対して鋭角についているので,引っかけて引っぱりあうにはかっこうの材料だったのだろう。 スミレもジロボウエンゴサクも,蜜腺が長い距に包まれているが,いずれも虫にとっての宝物をもっとも奥深い部屋に隠しておくための構造だ。受粉に役立つマルハナバチなどにだけに蜜を与えるためだが,この距に穴をあけて盗んでいく悪党もいる。よく目を凝らすと,距に食い破ったあとがいっぱい見つかることがある。
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【ひとくちメモ】 延胡索は漢方での名前。正確には中国の野生種を指すが,総称と使われることが多い。生理不順 腰痛などに効能があるという。
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【見わけ方】 ヤマエンゴサクはよく似ているが,そちらは山地に多く花は青っぽい紫色のことが多い。しかし,決定的な違いは,ジロボウエンゴサクの苞葉が切れこまないのに対して,ヤマエンゴサクの苞葉には切れこみが入ることである。 詳しくはエンゴサクの仲間(会員のみ)へ。
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