フォトエッセイ(野の花365日のウメより) |
撮影対象としているのは基本的には野生の植物である。人の手で植えられた植物を撮影する場合には,野生植物との関連がある場合や,人から頼まれた場合がほとんどである。こだわっているというより,関心がもてないというほうが正確だ。 しかし,ウメだけはちょっと例外だ。日本に入ってきた時代が古いことともあり,日本の山里の風情にぴったり溶けこんでいるからだろうか。 奥三河にはウメの木がたくさん植えられた山里があちこちにある。ほとんどは,観賞用ではなく実を採るための梅園である。八重咲きの園芸品種よりも,シンプルな白花がこの山里にはよく似合う。
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【ひとくちメモ】 ウメは中国原産とするのが定説だが,近年では日本在来の系統もあるのではないかという説が浮上している。大分県や静岡県では山奥に古木の群生地が知られている。しかし,渡来の歴史も古いため,古い時代に野生化した可能性もあり結論は簡単には出ない。
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【見わけ方】 ウメの学名はPrunus mume(プルヌス・ムメ)。中国原産といわれるが,このPrunusの仲間にはサクラやモモ,アンズやアーモンドなども含まれる。日本や中国だけでなく,ユーラシアの多くの地域ではこのPrunusの仲間が春を告げる花になっている。モモの学名も「ペルシャのプルヌス」を意味するPrunus persicaだ。 ロシアの沿海州ではアンズの仲間が,地中海ではアーモンドが,北ヨーロッパでも白いウメによく似たPrunusの花が咲いているのを見たが,どれもサクラよりもウメによく似た風情だった。
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