フォトエッセイ(野の花365日のハウチワカエデより) |
低地のモミジの代表格はイロハモミジだが,山ではこのハウチワカエデが多い。紅葉の美しさはいずれも甲乙つけがたいが,花の美しさはハウチワカエデに軍配を上げたい。 もっとも,ヤマモミジやオオイタヤメイゲツなどとともに,同じ仲間なので花もよく似ているのではあるが,新葉はともかく,花自体に写欲をそそられるのはたいていハウチワカエデである。 葉はイロハカエデに比べると手の甲の部分が大きくて指が短い感じである。都会的というよりは,永年山仕事をしてきた人のがっしりした手に似ている。 しかし,花はそれに似合わず繊細で少しの風にもよく揺れる。わずかな風の止み間に,花がピタリと止まるのを待ってシャッターを切った。 力持ちの男の繊細な心の本音に触れたような瞬間である。
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【ひとくちメモ】 和名のハウチワは天狗の持っている鳥の羽で作ったうちわのこと。
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【見わけ方】 コハウチワカエデは今年枝に軟毛がある。オオイタヤメイゲツは葉柄が長く花は帯黄色。 カエデについては林田甫さんのカエデともみじが詳しい。
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