フォトエッセイ(野の花365日のコショウノキより) |
まだ,植物の写真を撮り始めて間もない頃,ミスミソウを探しに雑木林に分け入ったとき,この花が咲いているのに出会った。最初の印象は,野生のジンチョウゲである。 とにかく咲く時期がよい。愛知県では2月から3月。まだほかの木々の芽は硬く,山に入る人も稀な季節である。 しかし,咲く季節は地域によってかなりばらつきがあり,九州で4月に咲くという情報もあれば,四国では11月に花を見たこともある。 しかし,私のイメージの中では,この花は誰も訪れることのない名のみの春,灰褐色の雑木林の中で,かすかな芳香を放っている秘められた花でなくてはならない。
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【ひとくちメモ】 果実が胡椒のように辛いのが名の由来ともいわれるが,実際には辛くないという。
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【見わけ方】 ジンチョウゲは同じ仲間だが,中国原産の栽培品で日本に自生はない。カラスシキミはよく似た種だが,雪の多い少し高い山に生える。
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