フォトエッセイ(野の花365日のセントウソウより) |
ひっそりと咲く控えめな花である。 見分けの難しいセリ科の植物だが,この季節この場所ならほかに見まちがえるものもないだろう。この季節とは桜が咲くか咲かないかの早春,この場所とは,低山のちょっと湿り気のある半陰地。チョロチョロと,小さな沢の音がどこからともなく聞こえ,落ち葉のにおいにかすかなヒサカキの香りが混じって鼻先に届く場所である。 和名の由来はよくわかってないが,仙人が住んでいるようなところに咲くので「仙洞草」と呼ばれる,などの説がある。 セントウソウの自生地は山奥深くとは限らないが,湿り気のある幽玄な雰囲気の場所に多いのは確かである。
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【ひとくちメモ】 セントウソウは日本ではありふれた植物だが,セリ科の中ではやや特殊な仲間で,日本特産1属1種である。
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【見わけ方】 イワセントウソウは,さらに標高の高いブナ帯に多い。セントウソウは,まず茎の先が大きな花柄に分岐し,さらにその先から小さな花柄が出る(複散形花序)が,イワセントウソウは,大きな花柄が一度分岐するだけでその先に直接花がつく(散形花序)。
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