フォトエッセイ(野の花365日のヤブレガサより) |
花よりも芽だしが親しまれている植物はそう多くあるまい。ヤブレガサはその筆頭にあげられるが,もし,名前が「〇×コウモリソウ」程度の平凡なものだったら,こんなにも親しまれているかどうかはわからない。平凡な草の芽も,名前次第ではコビトが影で柄を持っていそうに見えるから不思議だ。 夏の盛りになると,ひょろっと伸びた茎の先に目立たない花を咲かせる。芽だしを知っていても,この花を見たことないという人が多い。 花自体が目立たなくて人目を引かないのもあるが,真夏の林の中は春と比べると暗くて暑くてクモの巣だらけで,人を寄せつけない。 花を知らない人が多い原因は,むしろそんなところにあるのかもしれない。
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【ひとくちメモ】 ヤブレガサは,タイミンガサやモミジガサの仲間(Cacalia)とは別属のSyneilesis属に分類される。大きな決め手は子葉の形で,双葉にならず合成した子葉を持つ。
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【見わけ方】 芽だしの頃まちがえやすいのはモミジガサである。こちらも傘の名がついているが,切れ込んだ裂片が少し幅が広い。 深山にはタイミンガサやヤマタイミンガサがある。芽だしはそっくりだが,葉の切れこみはヤブレガサより少し浅い。また,多くの場合ヤブレガサより大きな群落になっていることが多い。
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