フォトエッセイ(野の花365日のキバナノアマナより) |
植物との出逢いには,それぞれの思いがあるが,私にとって原体験とも言うべき一連の出逢いがある。 それは,22歳の早春の頃,青春18切符で各駅停車を乗り継いで豊橋から稚内まで行った時のことである。1泊目は信州中野の,2泊目は秋田の友人。3泊目は夜行の青函連絡船,4泊目は函館-札幌の夜行列車,5泊目は旭川駅というプランだった。われながらうまく各駅停車だけを乗り継いでいったものである。 このときのことは細かいことまで鮮明に覚えていて,長野では,泊めてもらった大学の先輩の下宿から,自転車を借りて最寄の駅まで行った。少し早めに出て,中野の郊外の里山を歩いた。 田の縁にある柿の木の根元に,ヒメオドリコソウに混じって咲いていたのがこのキバナノアマナである。 このあと,新潟や北海道で生まれて初めて見る雪国の早春の植物の饗宴を味わって,それがのちのち自分の人生に大きな影響を及ぼすことになろうとは夢にも思っていなかったが,今おもえば,このときのキバナノアマナがその端緒だった。
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【ひとくちメモ】 キバナノアマナの分布は雪国に多いが,ヒメアマナは太平洋側にも自生地がある。
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【見わけ方】 アマナの名がつくが,白い花を咲かせるアマナやヒロハノアマナとは少し遠縁になる。同じGagea属には,ヒメアマナやエゾヒメアマナがあるが,いずれも稀な種で普通に見られるものはまずキバナノアマナ。ほかの2種は葉が糸のように細く繊細。
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