フォトエッセイ(野の花365日のショウジョウバカマより) |
時々ショウジョウバカマのことを「高山植物」と呼ぶ人がある。なにをもって高山植物とするか定義となると難しいが,ショウジョウバカマについては「高山にも生える植物」と呼ぶのが正しいだろう。 北アルプスの3000mほどのところに生えていることもあれば,おなじ中部地方でも標高50mにも満たない里山の沢のほとりで見かけることもある。 花期が早いので,里山の植物としては春一番の花となることが多い。花も美しいので,新潟でキクザキイチゲやカタクリの群落の中に咲いていても,北アルプスで高山植物の中に咲いていても,そう目立って見劣りすることはない。 そういう感覚を持つのも,この植物をおぼえたのが高山ではなく身近な里山だからろう。高山で見かけると,東京に出て有名になった近所のお姉さんに会ったような気がする。
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【ひとくちメモ】 ショウジョウバカマの著しい特徴として,葉先に子苗をつけ無性的に増殖する性質が上げられる。秋に落ち葉の下敷きになっている葉を探すと見つけることができる。
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【見わけ方】 従来,ショウジョウバカマを基準変種として,ツクシショウジョウバカマとシロバナショウジョウバカマを変種として認める見解が有力だったが,最近の研究では,上記の2変種をまとめて独立種コチョウショウジョウバカマとする見解も提出されている。 葉が薄くて蜜腺の底部が子房より上につくのがコチョウショウジョウバカマ,葉が厚くて蜜腺の底部が子房より下につくのがショウジョウバカマとされる。 また,同じ研究によると従来のHeloniopsis属は,ほかの属とまとめられてHelonias属とされている。本サイトの学名もそれに従っている。 参考 N. Tanaka. J. Jpn. Bot. 73:102-115. 1998.
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