カキツバタは,アヤメの仲間ではもっとも湿地を好むもので,高原の湿原に多いが本州の低地にも自生地がある。 「いずれがアヤメかカキツバタ」といわれるが,アヤメやヒオウギアヤメとは,外花被片に網目がないことで簡単に識別できる。 むしろ,ハナショウブとの識別の方が問題になる。ノハナショウブは,普通外花被片の紋が黄色だが,カキツバタは白色。しかし,個体や花の鮮度によって紋の白くなるノハナショウブもある。そういうときは,葉の中脈を見て隆起していればノハナショウブ,平坦ならカキツバタである。カキツバタの方が花期がやや早く,花の色は青っぽいことが多い。 和名の由来には諸説があり,そのうち「書き付け花」がなまったという説が有力で,それに従うと「杜若」の漢字は誤りということになるが,あえて親しまれているこの漢字を当てた。
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カキツバタ 2003年6月12日 福井県大野市 alt.=597m
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【漢字名】杜若
【花期】511 7月12月 【分布】北海道・本州・四国・九州 【草丈】ひざ 腰 【環境】人里・田畑,山地・低山,湿地・池沼
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カキツバタ 外花被片。網目模様はなく紋は白い(福井県大野市) |
カキツバタ 葉表。隆起はなく平坦(福井県大野市) |
カキツバタ 葉裏(福井県大野市) |
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カキツバタ ワタスゲの白,レンゲツツジの赤とともに,湿原の初夏を彩る。低地にも自生地はあるが,亜高山の高層湿原に見事な群落が多い 2003年7月6日 群馬県尾瀬ヶ原 alt.=1402m
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フォトエッセイ(野の花365日のカキツバタより) |
「いずれが菖蒲か杜若」といえば,似ていて見分けが難しいもののたとえだが,実はアヤメとカキツカキツバタバタの識別は難しくない。外花被片に網目状のもようがあればアヤメ,単純な白い紋だけだったらカキツバタである。 難しいのは,カキツバタとノハナショウブである。いずれも単純な紋だが,ノハナショウブは黄色を帯び,カキツバタは白い紋である。新鮮な花なら問題ないが,花がすがれはじめると,色が変わることもあり,あまりあてにならない。 もっとも確実なのは葉の中心部の太い顕著な稜を確かめるといい。稜があればノハナショウブ,なければカキツバタである。 カキツバタの方がノハナショウブよりもひと月ほど花期が早い。本州中部の低地では,カキツバタは5月中,ノハナショウブは6月に入ってから見ごろになる。
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