フォトエッセイ(野の花365日のマムシグサより) |
地味な花ではあるが,写真の材料としてはなかなかおもしろい。意外に被写体に選ぶ人が多い植物である。しかし,識別となると地方地方に特産種が多く,きわめて難しいもののひとつである。 和名は,芽だしの状態がマムシがしっぽを立てているかのように見えるからである。確かにこの状態を見て蛇を連想しない人はないだろう,と思えるほどよく似ているが,名前のおかげでずいぶん損をしているともいえる。 日本のものは仏炎苞といわれる花序の筒の部分が緑色か紫褐色のものばかりだが,中国には白い美しいものがある。
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【ひとくちメモ】 テンナンショウの仲間は雌雄異株で,生長の途中で性転換することが知られている。栄養状態がいいと雌株になる。 また,仏炎苞を開いてみると,なかでたいていハエなどの小型の昆虫が死んでいる。花序の中に入た虫はなかなか出られないような構造になっていて,もがくことによって確実に花粉をつける仕組みだ。しかし,なかには,結局出ることができずに死んでしまう虫もあるというわけだ。
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【見わけ方】 日本各地にたくさんの種類がある。 以下は代表的なもの。 関東地方に多く,仏炎苞の開口部が耳状に張り出す,ミミガタテンナンショウ。 海岸近くには付属体が糸状になるウラシマソウ。 日本海側では,葉が1枚のヒロハテンナンショウ。 四国や九州の温帯域には葉が3小葉になるミツバテンナンショウ。 関東以西の暖地には,葉が3小葉で著しく大きいムサシアブミなどがある。
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