Viola Story At Ri-Long

日隆スミレ物語

スミレを手にした姉弟
 「日隆(リーロン)」とは、日が昇るところという意味だそうである。標高3200メートル。中国四川省四姑娘山(スーグニャンサン)の山麓の急斜面に開かれたチベット人の村である。メコノプシス(青いケシ)をはじめとする高山植物の宝庫として知られる巴朗山(バロンジャン)、そのフラワーウォッチングの基地である。巴朗山から下り始めると、はるかかなたに黄

菜種の棚田に囲まれた日隆の村

  少年が手にしていたのはまぎれもなくスミレだった

色に煙る段々畑が見える。その菜の花畑に囲まれた小さな村が日隆である。
 私が、その少女と少年に出会ったのは、1999年7月、その村の坂道でのことだった。少女は背中に籠をかついでいた。そして、少年は手にスミレとおぼしき植物を持っている。花は終わってしまっているものの、確かにスミレだ。

そして、そのスミレは、私が今まで見たことのない奇妙な形をしていた。根本から蔓のような匐枝を伸ばし、その途中にいくつもの果実をつけているのである。

根本から地上とも地下ともつかぬことろに匐枝をはわせ、その先にいくつもの閉鎖花をつける

 「青いケシフラワーウォッチング」私たちのツアーはそういうタイトルだったが、講師として参加した私の第一の興味は、この四川省のまだ見ぬスミレだった。

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photo and text by Masashi Igari
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