ホーム > 野の花365日 > その日の花 2月8日 Viola odorata
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Viola odorata |
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ヨーロッパの人とスミレの話をすると,必ずといっていいほど「そのスミレは香りがあるか?」と尋ねられる。専門的な植物の文献にまで,「Sent(香る)」か「No sent(香らない)」かが種ごとに明記されているのには驚く。 花の香りは,標本で検証することができず,しかも人によって感じ方が違う。そんな形質を重要視して分類するのは,少々心もとない気がする。それにもかかわらずヨーロッパの人がスミレの香りにこだわるのは,われわれには想像を絶する香りへの思い入れがあるからだろう。 Viola odorataは日本でニオイスミレの名で呼ばれるように香りが強い。香料を採るために栽培されることもある。 また,英語ではSweet Violetと呼ばれ,日本でいえばツバキかサツキのように園芸品種が無数にあり,イギリスでは国指定のコレクションまである。 そして,上質な園芸品種としての重要な条件のひとつがやはり香りである。 「ビーナスの吐息よりかぐわしい」 シェークスピアはSweet Violetの香りのことを,こう評した。 【見わけ方】ヨーロッパにはViola odrataによく似た近縁種が,普通のものだけでも数種類あり,しかも雑種を作りやすいので見わけ方が難しい。地域にもよるだろうが,イタリアやフランスでは,山の中にはViola albaが多い。これは毛が多く花が白花のこともある。 Viola suavisは,葉に毛が少なく,側弁の毛も量が少なく,長さがそろわないのが特徴。 Viola hirtaは匐枝がなく,葉は楕円状長三角形で先がとがる。 【ひとくちメモ】Viola odrataに近縁なものとして,日本ではアオイスミレとエゾアオイスミレがある。両種ともViola odrataほど強くはないがいい香りがする。 ほかにも,日本のスミレで香りがあるものは多数知られているが,タデスミレやシコクスミレなどのように,いわゆるスミレの香りとは少し違った香りを持つものもある。タデスミレはさわやかで涼しげな香り,シコクスミレはキク科の植物のような甘い香りである。 いずれにしても,香りを文章で表現するのは,色や音以上に難しい。 |
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