ホーム > 野の花365日 > その日の花 3月25日 シハイスミレ
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シハイスミレ (スミレ科) Viola violacea |
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日本に60種ほどあるスミレの中でもちょっと思うところのあるスミレである。スミレに夢中になり始めた頃にシハイスミレの多い兵庫県に住んでいたこともあり,このスミレの変異には一時興味を持っていろいろなところを訪ね歩いた。残念ながら,「変異が多い」という漠然とした結論しか未だに得られていないが,広範囲にこのスミレを見ている人が誰しも同じように抱く印象である。 「紫背菫 まだらの個々に異なるも 心をひけば 歩みをとどむ」 土屋文明が明日香の芋峠で詠んだ歌だが,この歌をはじめに聞いたときに,わが意を得た思いがした。斑入りのもの,そうでないもの,葉に光沢があるもの,暗緑色のもの,幅が広いもの,細いもの。 この変異の多いスミレに目を留めだすと,一株ごとに確かめなければ気がすまなくなってくる。土屋文明は,宮地数千木と親交が深かった。スミレを材料に染色体の研究をしていた植物学者である。それだけにスミレにはずいぶんと深い関心を持っていたようである。 このことを新聞に書いたところ,朝日新聞社のTさんが,文明の足跡をたどって芋峠を歩いてみよう,と誘ってくださった。 写真はそのとき撮影したものである。この株は斑入りだが,文明の歌どおり,斑のあるものないもの,渾然一体となって花を咲かせていた。 【見わけ方】マキノスミレは東日本に生える変種。葉が細長く,葉裏の紫色は薄く,直立気味に展開する。 詳しくはシハイスミレの仲間(会員のみ)へ。 【ひとくちメモ】和名は紫背菫で,葉の裏が紫色を帯びることによる。学名も紫を意味するviolaceaという形容語がついている。 |
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