ホーム > 野の花365日 > その日の花 4月16日 クマガイソウ
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クマガイソウ (ラン科) Cypripedium japonicum |
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受難の花である。残念ながら人目につくところからは姿を消した。いうまでもなく,盗掘によるものである。この花を野生の状態で見ることができたとしたら,それは幸運としかいいようがないだろう。 野にある花を自分の庭にも咲かせたいと思うのは,自然な感情ともいえる。ホトケノザやナズナのように,種子から花が咲くまでに数か月しか要しないものだったら,いくら花泥棒が増えてもそう簡単になくなったりはしない。 しかし,クマガイソウのように多くのランは,花が咲くまでに何年もかかることから,一度盗掘に遭うとそう簡単にその自生地は回復することはない。発芽の条件が難しいこともあり,増殖をもっぱら栄養繁殖に頼っていることも要因のひとつだろう。そして,数が少なくなると余計に希少価値が出て,マニアの標的になる。 この自生地は知人に教えてもらったものだが,幸い悪い人の目につかないまま群落を広げつつある。 この自生地に行くときは,わざわざ車を遠くに止め,自生地への入り口へ入るときは,誰かに見られていないか確かめて,まるで興信所の尾行を巻くようにして,忍び会いに行くのである。 【見わけ方】アツモリソウは名前からしてよく対比されるが,クマガイソウの自生地が主に低山地の林であるのに対して,アツモリソウは亜高山帯の草地に多い。いずれも自生地がごくわずかしか残っていないのは同じである。 【ひとくちメモ】クマガイソウの名の由来は,袋のような唇弁を,源平合戦の熊谷次郎直実のほろに見立てたもの。 |
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