ホーム > 野の花365日 > その日の花 5月30日 Cypripedium macranthum × calceolus
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Cypripedium macranthum × calceolus |
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沿海州に住むロシアの植物学者で友人のK氏とは,2001年から毎年,沿海州への花の旅を企画している。日本にはあまり紹介されることのない沿海州の自然を紹介することと,ロシア経済の混乱で植物学者としての活動が経済的に難しくなってきている彼らの資金源にしてもらおうというのがねらいである。 最初は春のスミレやオキナグサの時期に企画したが好評だったので,初夏のアツモリソウやシャクヤクもやってみようということになった。 実は,私自身はじめ乗り気ではなかった。スミレなどとちがって,アツモリソウなどの多年生のランは,一度盗掘に会うと群落が元通りになるまでに大変な年月が必要で,しかもマニア的な収集者も少なくない。日本では,このサイトでも紹介したレブンアツモリソウの例を見るまでもなく,アツモリソウそのものが,山野からは壊滅的である。 自然を守る気持ちを多くの人に持ってもらうためには,多くの人にそのすばらしさを知ってもらう必要がある。しかし,そういう想いで自生地に連れて行った人の中に,ひとりでもプロの盗掘家のような人がいれば,自生地は壊滅的な打撃を受けかねない。 このディレンマにはいつも悩まされるが,幸いロシアは出国の際,キャビアやウォッカだけでなく,植物の持ち出しに関しても大変厳しく,乾燥標本でさえも簡単には通してもらえない。アツモリソウの根がスーツケースの中からごろごろ出てきた日には,身柄を拘束されかねない。この傾向は遺伝子資源という観点から最近強まる傾向があり,ロシアの話ではないが,植物を持っているのを見つかって留置場へ入れられたという学者の話も聞く。 出国の際の手荷物検査の厳しさには毎回辟易するが,このお国柄がアツモリソウの群落を守ってくれるともいうことができる。 【見わけ方】沿海州にはアツモリソウの仲間が3種が比較的普通に見られるが,このうちカラフトアツモリソウとアツモリソウが雑種群落を形成している。両親の形質をさまざまに受け継いだいろいろな型が見られるが,写真のものはその中の一型。 詳しくはウラジオストクの植物へ。 |
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