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1月26日[その日の暦]

 
   オナガカンアオイ (ウマノスズクサ科) Heterotropa minamitaniana

「20世紀最大の珍種」
この種を記載した初島住彦博士はこういわれたそうである。正式に発表されたのは,ほんの30年程前1970年のことである。自生地は山奥というわけではなく,人里の近くにいくらでもあったそうである。考えてみれば,こんな特殊な形をした植物がそれまで見つからなかったことのほうが不思議である。ただし分布域はごく狭い範囲だった。
発見者の南谷忠志さんによると,発表からまもなくして,自生地のものはほとんど盗りつくされてしまったという。もともと狭い範囲にしかなかった植物なので,現在では自生状態のものを見るのはとても難しい。
カンアオイの仲間は分布拡散速度が遅く,地域地域で独自の種が発達しやすかったと考えられているが,その悠久の進化の歴史から見れば30年という時間はまさに一瞬といえる。オナガカンアオイは,発見後一瞬にして絶滅危惧種に追いやられてしまった受難の植物である。

【見わけ方】
10cm以上にも伸びる萼裂片が何よりの特徴で,花が咲いていれば見まちがえるカンアオイはない。本文にも書いたように,カンアオイの仲間は地域ごとに細かく種分化していて,地方によって生える種類がちがうが,一方で全国に分布する一般的な種はないといっていい。種を同定するには花の断面の観察が欠かせない。
詳しくはカンアオイの仲間(会員のみ)へ。

【ひとくちメモ】
本文にカンアオイの仲間は種子散布力が弱いと書いたが,種子を弾き飛ばすわけでも,風に乗せるわけでもなく,もっぱらアリに種子散布を頼っている。これが分布拡散速度が遅い要因といわれるが,考えてみれば同じような植物はほかにもある。エゾアオイスミレは種子を弾き飛ばさないスミレで,カンアオイの仲間と同じように種子散布をアリに頼っているが,ユーラシア全域に分布している。カンアオイの仲間の分布が拡散しにくいのは,ほかにも何か要因がありそうだ。
2003年4月12日 宮崎県
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